こよみのアトリエ

詩とか日記とか何かの感想とか。自分のことかいいことしか言いません。

福岡ポエトリー

『黄色い線の外側』

PM8:00、駅のホーム。 帰宅ラッシュはとうに過ぎて、 電車を待つ人はまばらで、 入り込む雨が冷たくて、 踏切の音が遠くに聞こえた。 そして。 線路を挟んだ向かいのホームに、 昔の誰かの幽霊を見た。 覚えている。 声も、住んでいる場所も。 誕生日だって…

『Andante』

始まりは。 そう、始まりは確か夢の中だった。 セーラー服に二つ結びの髪。 それは高校生の私だった。 昔の私が問いかけた。 「私が死んでも、私の事、覚えててくれる?」 私は言った。保証はできないと。ずっと昔を考えられる程、私は器用じゃないから。 彼…

『人魚は外界の夢を見る』

17の制服は、強化ガラスの水槽だ。 食卓で。教室で。部室で。塾の前で。 私は並べられる。私は評価される。 通学路で。駅前で。コンビニで。ショッピングモールで。 私は展示される。私は値踏みされる。 大切に育てた蕾たちは、 貴方達に踏み荒らされました…

『灰空と怪物』

灰色の空を見たことはあるか ビルに囲まれたこの街では 夕暮れと夜の狭間 一瞬だけ 空が鼓動を止めるのだ 夕焼けの赤を手放し 夜空の青を拒んで 雲ひとつすら纏うことなく その空は 色を無くすのだ それは 下手な滅びよりもよっぽど 世界が終わるような空で …

『風上で唄う』

図書室の隅に彼女は居た。 その日も彼女はつまらなさそうに、空を眺めていた。 彼女はいつも、睨むような目をしていた。 いつも1人で座っていた。 机の上には原稿用紙の束があった。 僕は、彼女のようには生きられないと思った。 1度だけ、彼女と話したこと…