こよみのアトリエ

詩とか日記とか何かの感想とか。自分のことかいいことしか言いません。

『CQ』

ハロー、CQ CQ

こちら世界線7E0(セブン エコー ゼロ)。

聞こえますか?

 

そちらの世界の私は、今何をしているのでしょうか。

この声が聞こえているのなら、少なくとももう「大人」なのでしょう。

それだけで私には十分です。

 

こちらの世界は相変わらず流れが早く、

街の呼吸に追いつけないまま、

私は1人で溺れています。

二十歳になれば大人になれると思ってたけど、

そんなに簡単な話でもないのですね。

どれだけ足掻いても子供のまま。

本当に自分が嫌になります。

 

皆はなんであんなに早く泳げるのでしょうか。

気づけば周りはみんな大人になっていました。

就職して、結婚して、自分で道を切り開いています。

寂しくないのでしょうか。

自分の道は、自分1人で歩むものです。

誰もついてきてくれないのに。誰も頼ることはできないのに。

 

私も、皆のようになりたいです。

不器用で怖がりで、足を踏み出すことすらできない私だけど。

誰の真似もできない、何者にもなれない私だけど。

 

もしこの声が聞こえているのなら、

お返事ください。

どこかにいるあなたから、

どこにも行けない私のために。

 

 

ハロー、7E0。

こちら世界線7EB(セブン エコー ブラボー)

聞こえますか?

 

通信、受け取りました。

 

こちらの世界のあなたは、

教師になって毎日学校に缶詰になっています。

「数学が嫌いになる!」とか

「残業やだ!!」なんて言いながら、

毎日苦しそうに。

でも同じくらい楽しそうです。

 

 

いいですか。

あなたは、あなたにしかなれないのです。

誰かから大切なものをもらうことはできるでしょう。

交換することはできるでしょう。

でも誰かになることはできないのです。

私たちは最初から、誰かになれる力も、資格も、

持ち合わせてはいないのです。

 

だから、あなたはあなたにならなければなりません。

やりたいこと。行きたい場所。

言いたいこと。なりたいもの。

それを、丁寧に積み上げて。

それが、あなたになっていくのです。

私たちは、何者にもなれないのだから。

 

最初は、誰だって溺れるものです。

街の呼吸に急かされて、時間の濁流に流されて。

だから、落ち着いて胸に手を当てて。

自分の鼓動を確かめて。

あなたが貰ってきたものが。

この瞬間共にいてくれる人が。

あなたが自分の意志で進む街が。

あなたを、掬い上げてくれます。

 

悩みながら、溺れながら、戦い続けるのです。

あなたが、なりたいあなたになるために。

 

 

ハロー、わたし。

あなたの切り開く未来が、

素敵なものであることを願っています。

 

 

 

以下、作品解説等。

 

ポエトリースラムジャパン2018 東京大会B

準決勝CDブロック 発表作品

 

 

どこかの未来の話。

あるいは、誰かの覚悟の話です。

 

通信の初めにEをエコー、Bをブラボーと読んでいるのは、

フォネティックコード」に準ずるものです。

特に日本のような非英語圏では発音の問題で聞き間違い等が起こる危険性があるため、

このような少し特殊な読み方をするらしいです。

無線通信等で用いられており、この作品でも参考にしています。

断じてかっこいいから採用したとかそんな厨ニな理由じゃないです。

そんな理由じゃないです。

 

……本当ですよ?

 

閑話休題

「何者にもなれない」という考えはいつも私の心に巣食っていて、

度々、夜目を閉じた時に暗闇から襲いかかってきます。

皆はとっても素敵で輝いているのに。

皆はやりたいことをやりたいようにやっているのに。

皆は現実に果敢に立ち向かっているのに。

皆は1歩ずつ未来へ進んでいってるのに。

私だけ、私だけ、私だけ。

 

これは、そんな弱い私、心の中に棲む怪物に、

今持ってる全部をもって立ち向かうために書いた詩です。

 

 しっかり向き合った上で考えれば最初から答えは出ていて、

出会ってきた誰とも同じ人生を歩んでいない私が、

それらの誰かになることなんてできるはずがないのです。

 「あの子になりたい」なんて考えるのがお門違い。

憧れることはできても、目指すことはできても、

全く同じ存在にはなれないんです。

 

だから私にできるのは、なりたい「自分」になっていくことだけ。

たくさんの人から貰ってきたものをかき集めて。

私の好きなものを積み重ねて。

私の憧れるものを見据えて。

そしてなりたい自分を目指していく。

 私に与えられた道は、それしかない。

 

誰かを見るのではなく、自分をちゃんと見つめれば、

可能性はいくらでも広がると思ったんです。

だって、私はいろんなものを持ってる。

いろんなものを、貰ってきている。

私は何者にもなれないけど、

だからこそ、何者にでもなれるんです。

今まで出会ってきた人々と、

今まで戦ってきた私自身が、

それを保証してくれる。

 

私が私である限り、

私を取り巻く全てが、きっと私を助けてくれる。

だから私は負けてはいけない。

怖くても、戦い続けなくてはならない。

 

そんな想い、覚悟を寄せ集めて、

「未来の私からのエール」という形でまとめたのが、

この『CQ』です。

ある意味において、これは私の全てです。

 

ちなみに私がPSJに出た理由の一つも、似たようなものだったりします。

自分の可能性を手繰り寄せて戦う場所を、

私は芸能花伝舎に決めたのです。

その選択は間違ってなかったなと思います。

さらにたくさんのものを貰えましたし、ね。

 

なんだかこれ以上は同じ話を繰り返してしまいそうなので、

この辺りでこの話はおしまいにしますね。

 

これからまたいくらでも悩むのでしょうが、

「この詩を書けた」という事実そのものが、

私の背中を押してくれる気がします。

そんな感じで、これから進んだり止まったりすると思うので、

改めて、暖かく見守っていただけたら、

とても嬉しいです。